経歴を盛る人が、いつか苦しくなる理由|嘘は、つき続けるほど自分を追い詰める
転職が多い、仕事が続かない、今の仕事がつまらない。その奥に「自分にも人にも嘘をついている」状態が隠れていることがあります。転職7回以上の51歳が、経歴を盛らないことの身軽さを、当事者の目線で書きます。
職歴に自信がないと、ほんの少し盛りたくなります。空白を埋めて、できることを多めに言って、退職の理由を当たり障りなく整える。
その気持ちは、痛いほど分かります。私も人間なので。
ただ、この記事で書きたいのは逆の話です。盛った経歴は、入った後の自分をずっと縛り続けます。
「盛る」は聞こえはいいけれど、要は嘘です。そして嘘は、一度つくと、その嘘を守るために次の嘘がいる。
転職が多い人、一つの場所で仕事が続かない人、今の仕事が面白くない人。その中に、自分でも気づかないうちに「嘘で身動きが取れなくなっている」人が、たぶん少なくありません。
昔の私が、その入り口に片足を突っ込んでいたので。
この記事では、嘘がどう自分を追い詰めるのか、そして嘘をつかない生き方がどれだけ身軽か、を順番に書きます。
「盛る」は、言い方を変えただけの嘘

まず、言葉から正直にしておきます。
「経歴を盛る」と言うと、なんだか前向きな自己アピールに聞こえます。でも中身を見れば、やっていることは事実と違うことを伝える、つまり嘘です。
- 半年で辞めた仕事を「2年やっていた」ことにする
- やったことのない作業を「できます」と言う
- 無職だった期間を、別の何かで埋める
言い方を整えても、事実と違うなら、それは嘘です。
断っておくと、私はここで聖人ぶる気はありません。盛りたくなる気持ちは、本当によく分かります。
私の職歴は、営業、自営、パチプロ、無職の期間、漫画喫茶のバイト、ホテル。並べると我ながらひどくて、履歴書を書くたびに気が重くなる代物でした(全体の経緯はこちらに書いています)。
学歴は高卒、資格の欄は空白。書ける中身そのものが浅い。あれを少しでも良く見せたい気持ちが、なかったと言えば嘘になります。
だからこそ思うんです。問題は、盛りたくなる気持ちそのものではなく、その先で何が起きるかを知らないことだ、と。
ここだけの本音
盛りたくなる人は、たいてい真面目な人です。今のままでは受け入れてもらえないと、自分を低く見積もっている。だから盛る。責められるべきは性格ではなくて、追い込まれている状況の方だと思っています。
嘘は、嘘を守るために次の嘘を呼ぶ
ここからが、本当に伝えたいところです。
嘘の一番やっかいなところは、一個では終わらないことです。
新しい環境に、盛った自分で入ったとします。最初の嘘は、たった一つかもしれません。
でも、人は会話の中で過去に触れます。「前はどこで何を?」「これ、やったことある?」。そのたびに、最初の嘘とつじつまを合わせないといけない。
一つの嘘を守るために、二つ目、三つ目の嘘がいる。
そして二つ目の嘘を守るために、また次がいる。雪だるまみたいに膨らんでいきます。
嘘が膨らんでいく流れ
- 最初に、職歴を一つだけ盛る
- 盛った前提を聞かれて、合わせる嘘を足す
- 足した嘘をまた聞かれて、さらに足す
- 気づけば、覚えておくべき設定が増えている
ここで起きるのは、ただ嘘が増えることだけではありません。
増えた嘘を、全部覚えておかないといけない。誰に何をどう言ったか、矛盾しないように。
これが、地味に、でも確実に効いてきます。
つじつまを守る頭で、本業の集中が削られる
人の集中力やエネルギーは、無限ではありません。
一日に使える分は決まっていて、そこから何かに使えば、別のことに使える分は減ります。当たり前の話です。
嘘をついて働くと、その限られた分の一部が、ずっと「つじつまを守ること」に取られ続けます。
嘘をつくと、頭の中で同時に走るもの
- 今日の仕事そのもの
- 前に誰に何を言ったかの記憶
- これから矛盾しないための言葉選び
- バレていないかの確認
本来なら、一番上の「今日の仕事」だけに集中すればいい。
でも嘘がある人は、残りの三つを常にバックグラウンドで動かしている。本業に注ぐべき集中が、嘘の管理に吸い取られていきます。
私はコツコツ同じことを繰り返す仕事が性に合っていて、それでいまの現場仕事が10年あまり続いています。
その実感から言うと、仕事が続く人というのは、目の前のことに頭をまるごと使えている人です。
逆に、頭の半分が別のことに取られている状態で、いい仕事は続けられません。嘘は、続けるための集中力を、内側から削っていきます。
ここだけの本音
仕事が面白くない、身が入らない。その原因を能力や相性のせいにしている人の中に、本当は「頭が嘘の管理で手一杯」というだけの人が、いる気がします。面白くないんじゃなくて、面白がる余白が残っていないんです。
「うまくやれている」のは、自分だけがそう思っている

ここで、もう一段つらい話をします。
嘘をついている本人は、たいてい「うまくやれている」と思っています。バレていない、ごまかせている、と。
でも、現実は逆のことが多い。周りは、わりと早い段階で気づいています。
話のつじつまが合わない瞬間、表情がこわばる瞬間、同じ質問に違う答えが返る瞬間。人は、そういう小さなズレを意外と覚えているものです。
そして、面と向かっては言われません。陰で言われます。
「あの人、話を盛るよね」「言ってること、よく変わるよね」。
きついのはここからで、陰でそう言われ始めたことに、本人もうっすら気づいています。
視線の温度が変わった。前ほど込み入った話を振られなくなった。なんとなく、距離がある。
気づいているのに、気づかないふりをするしかない。だって認めたら、最初の嘘まで崩れてしまうから。
つまり、ここでもまた嘘をつくことになります。「気づいていないふり」という、自分への嘘です。
人についた嘘を守るために、今度は自分にも嘘をつく。これが一番しんどいところだと思います。
だから、たいてい続かない

人への嘘と、自分への嘘。両方を抱えたまま働くと、どうなるか。
居心地が、じわじわ悪くなります。
嘘を抱えた職場で起きること
- つじつま合わせに疲れて、仕事に身が入らない
- 周りの視線が気になって、リラックスできない
- 込み入った話を任されなくなり、手応えも減る
- そのうち、居づらくなって辞めたくなる
辞めて、次の場所へ行く。そこでまた、前と同じように少し盛る。
そしてまた、同じことが起きる。嘘は、転職が続かない理由そのものになり得ます。
あるいは、辞める道を選ばない人もいます。辞める踏ん切りもつかないまま、嘘がバレた気まずい空気の中に居続ける。毎日が薄くて、何も楽しくなくて、本来出せたはずの力も出せないまま、ただ時間だけが過ぎていく。辞めて転がり続けるのとは別の、静かに沈んでいく道です。これはこれで、削られ方が見えにくいだけで、相当しんどい。
私は20代30代を、別の理由で転がり続けた人間です。選ぶ基準がなくて、一発逆転ばかり狙って、職歴の行数だけが増えていった(その失敗はこのブログの中心記事に書きました)。
その経験から、一つだけ確かに言えることがあります。癖になったやり方は、場所を変えても勝手についてきます。
悪い癖というのは、相手や場所を選んでくれません。盛るのが癖になった人は、たぶん次の場所でも盛ってしまう。
嘘は、一回つくと癖になる。これは脅しではなく、似た構造の失敗を山ほどやった人間の実感です。
そうならないために:嘘をつかないと、こんなに身軽

ここまで、暗い話を続けました。最後は、その逆の話で終わります。
嘘をつかないことの一番のメリットは、立派だからではありません。ただ、ラクだからです。
正直に出してしまえば、守るべきつじつまが、最初から存在しません。
嘘をつかないと、手に入るもの
- 覚えておく設定がない。聞かれたら本当のことを言うだけ
- 頭が一個も取られない。集中を全部、目の前の仕事に使える
- 周りの視線に怯えなくていい。隠すものがないから
- 辞める理由が一つ減る。続けやすくなる
私は職歴を正直に出してきました。職場で「前は何してたの?」と聞かれることは、今でも結構あります。前の仕事がしっかりしていない私には、毎回ちょっと気まずい。
でも、気まずいだけで済むんです。一瞬気まずくて、それで終わり。守るべき嘘がないから、その後に怯えることが何もない。
これが、盛っていたらこうはいきません。気まずさのあとに、つじつま合わせと、バレる不安が延々と続いていたはずです。
正直に出すと、通る場所は確かに減るかもしれません。でも、通った場所では、頭をまるごと仕事に使えます。
そして見られていたのは、結局のところ過去の行数より、今日の仕事ぶりと「これからも続けてくれるか」でした。転職7回以上の私が10年続けられているのが、その証拠です(同じ話はこちらの記事でも書いています)。
最後に伝えたいこと
盛りたくなったら、それは「今のままでは足りない」と自分を責めているサインかもしれません。でも、足りないところごと出して通る場所は、思っているよりあります。嘘で武装した自分より、丸腰の自分の方が、ずっと身軽に長く働けます。
まとめ:嘘を手放すと、頭が自由になる
最後に、この記事を振り返ります。
この記事のまとめ
- 「盛る」は嘘:言い方を整えても、事実と違えば嘘になる
- 嘘は増える:一つの嘘を守るために、次の嘘がいる。雪だるま式に膨らむ
- 集中が削られる:つじつまを守る頭で、本業に使える集中が減る
- 必ずバレる:本人は気づかないふりをするが、周りは早くに気づいている
- だから続かない:居心地が悪くなり、辞めるか、楽しくないまま居続ける
- 正直は身軽:守る嘘がないと、頭を全部、目の前の仕事に使える
転職が続かない、仕事が面白くない。その原因を、能力や運のせいにしていませんか。
もしかしたら、頭の一部が「守ること」に取られているだけかもしれません。それなら、手放せば軽くなります。
今日から急に何かを告白する必要はありません。次に経歴を書くとき、次に過去を聞かれたとき、ほんの少しだけ正直を選んでみる。それだけでいい。
嘘を一個手放すたびに、頭が一個ぶん、自由になります。
その自由は、ちゃんと今日の仕事に使えます。丸腰でいいんです。その方が、ずっと遠くまで歩けます。
私の職歴や立て直しの経緯をもっと知りたい方は、プロフィールに全部書いています。
※本記事は私個人の体験と考えの記録です。転職・就労の結果を保証するものではありません。
駆(かける)(51歳・現場仕事10年目)
転職7回以上・現場仕事10年目の51歳。「転職のプロ」ではなく、職歴ボロボロを実際に生きてきた当事者として、過去の自分に向けて書いています。
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